ふらふら生きつつふらふら書く

情報処理技術、演劇、仕事、生活、他諸々、頭の中を整理するために書き出します。

しごと

誤解していた。
仕事というのは、人の役に立つことだと言われて育ってきた。
つもりでいた。
世のため、人のためになることが仕事であり、真に相手にとって十分な結果をご用意差し上げることが、お客様への誠意であると思っていた。
どうやら違った。
というか、フォーカスがずれていた。

おじいちゃん先輩と顧客満足を考える時間は、はらはらしつつ、冷や汗をかきつつも、面白い時間だった。技術者顧客に対して、失敗の反省・言い訳文を練るにあたっては、おじいちゃん先輩が取得なさった品質管理の資格が非常に有用であり、その考え方は非常にためになった。
ただ、情報通信技術にしろ、化学技術にしろ、技術と呼ばれる価値のうち、技術に触れない大半のお客様にとって最も興味があるのは、お客様が求める結果にその技術がどれだけ寄与するかということであって(ここまではわかる。その通りである)、そのリスクや詳細な前提条件というのは、大半のお客様にとっては面倒なことであり、些事であり、理解するに値しないものである(これがイミフ)らしい。そういった臭いものは、技術を提供する側が、押し込めるか、安心させる何かを提供するに決まっていて、ましてや臭いものをお客様に出すとは何事だお客様だぞこっちは、というような様子である。情報機器のセキュリティリスクの話を50代後半以降の方に説明する折、お客様は、なんだかよくわからんが万全を期せよとの言い方をなさる。万全などなく、常に情報リスクはつきまとうものであるとの説明が、不十分なのか、理解できないのか、理解したくないのか、なぜか伝わらない。わからないならわからないで、セキュリティに気を使うがための多少の不便があろうとも、こちらが申し上げる通りに運用なさったら良いのに、どうあってもその多少の不便が気にくわないと言ってはばからない。そんなに気になって仕方ないなら、インターネットなんて繋がずに、金庫にでも入れて保管しておけば良いのにと思っている。実際、インターネットに接続しないという手段で情報漏洩対策とするお客様もいらっしゃるし、ネットにつながないで済む運用なんていくらでも考えられそうなものである。これまで、うん十年とパソコンなしで仕事をなさっていらっしゃたのであるから、それはお年を召されたお客様の方が、要領というものをよくわかっていらっしゃるのでは?情報通信機器という便利な道具を使って利益を追求しようとなさっているのは、あくまでお客様であって、付随する情報リスクを負うのはどこまでもお客様であるけれども、お客様はそれを嫌って、そしてなぜか保険屋ではなく、技術者に無償で責任を負わせたいらしい。

サイバー保険とは | サイバー保険 | 日本損害保険協会
安全です。大丈夫ですよ。何か事が起きれば、それはすべて私共技術者の責任でございますよ。なに、後始末ですから、お金なんていただきません。私共の技術を買ってくだすっているのですから。いつもお世話になっております。どうぞ今後ともご愛顧くださいまし。
あほらし。ご自分でおやりになるがいい。あるいは、紙と鉛筆で。どうぞ。お好きになさって。だれもかれも、安く買いたたくのをやめられません。それも仕方ない。あなたがたも安く買いたたかれてきたんですものね。経済戦争に勝つため、安くて高品質は良いことだと、世界一に輝いた時代が忘れられないご様子。バブルを楽しまれた皆様と違って、物心ついたころから今に至るまで、同じ国民のはずなのに、若いというだけで、安く買いたたかれ続けております。上がり続ける社会保障費に疲れ切ってしまいました。そのうえあなた方がボケた頃合いの始末までつけなければならないなんて、まっぴらでございますよ。ですが、それもまた仕方ありませんね。皆様のおじい様がはしゃいでしまったがために、世界大戦に巻き込まれる羽目になって、後始末をつけさせられてきたんですものね。私たちもまた、甘んじて受け入れよとのことでしょう。
仕事というのは、お殿様のご機嫌を取ること。お殿様の身代わりに首を切ること。お殿様が満足さえすれば、真実などというのはどうでもよろしい。しいて言えば、お殿様の夢こそが真実であります。お殿様が見ていたい夢を、死ぬまで見せ続けて差し上げられたなら、最上の仕事と言えましょう。

半端な時間に目が覚めた。それだけのことです。